22w  第一子 
原因不明

婚約はしたものの、日付など詳しいことをイマイチ決めないままパパと過ごしていた時、あなたはママのお腹の中にやってきてくれたんだよね。
それで急いで結婚したパパとママ。
5ヶ月を過ぎてママのお腹もふくらみが目立つようになり始めて。
6ヶ月入ってしばらくする頃には、すごく小さくて弱い響きがママのお腹にかんじられるようになって…ママはこれが胎動だと思って喜んでいたんだ。
一日でも早くあなたを名前で呼んであげたくて、パパとママは二人で一生懸命名前を考えました。深く透き通る水晶のように、純粋で、そして真実を映し出す子であるように ---深晶、みあき---。
お名前が決まったよ、ってパパがママのお腹の中のあなたに報告したのは、悲しいお別れがわかる前の晩だったね。
今まで行っていた病院から、出産予定の助産院さんに転院して最初の健診。
うつしだされた超音波の画面は…4週間前の健診の時と同じだった。ママは「あれ?」と思ったよ。でもまさか、って。それまでほがらかに色々話し掛けてくれてた助産師さんが急に無口になって、慌しくなったの。ママのお腹に何度も超音波のプローブを当てなおしたり、心音を聞く機械をいろんな角度から当てたり。心臓が動いてない---その言葉に最初に泣いたのはパパだったけど、ママはなんでだろうね。
泣いちゃいけない、って瞬間から思って、頭の中を真っ白のまっさらにしていたんだ。何にも考えないように。何にも感じないように。そして、また最初の病院に戻っちゃったね。
あなたがママのお腹から出る日の前の晩、病室でずっとお話したの、覚えてる?
ママはお話した内容は忘れちゃったけど、あの時の病室のにおい、天井の色、枕もとの明かりの色…それは覚えているよ。
次の日の朝、あなたがうまれて。あんな静かなお産ってあるんだね。
誰もなにも言わなかった。先生も、助産師さんも、当たり前だけど深晶くんも。そして、ママも。
分娩室の天井を見つめて、ただぽーってしてたとき、お隣の新生児室から赤ちゃんの泣き声が聞こえたんだ。ママは「どうしてこれが深晶の声じゃないんだろう」って、頭の中から目玉の中までなにかがきゅーってなって、泣いちゃったけど。今思えば、あのタイミングのよさは、他の赤ちゃんの体をかりて、あなたがママに聞かせてくれた、あなたの産声だったのかもしれないね。
ママがずっと胎動だと思っていたあの響きは、あなたの動きじゃなくて、動かなくなったあなたが揺れてママのお腹の壁にひびいてた動きだったんだって。もしママが胎動ってどんなものかちゃんと知っていたら、もっと早くあなたに気づいてあげられて、せめてあなたのお顔がちゃんと見られるうちに出してあげられていたんだろうな。
時間がたって変わってしまったあなたのお顔を、見るときに勇気がいってしまったママを許してください…。ごめんね…。
あれからいろいろなことがあったよ。性格がものすごく悪くなっちゃったママは、あなたがママ達に伝えたかったものがなにか、時間がかかってやっと気づいて。もう一度あなたがパパとママのところに来たい、って思ってくれるようにがんばったんだ。
そしてね、先月、あなたに弟が生まれたよ。そして、今月、やっとあなたの体を、お墓に入れてあげられるようにもなったよ。今までお寺さんでさびしかったろうね。
ママは、あなたに会えてよかった。嬉しいよ。これからも、ずっと一緒だからね。そして、たくさんたくさん、ありがとう。
つきなみな言葉でしか伝えられないけど、それがママの精一杯だから、
"ごめん"は言わないね。。。